2008年11月17日

微分方程式とロジスティック式(1)

代数と三角関数は知っていたので、どんな数学の問題が出てきても解ける自信があった。 でもシュワブ先生は次のような問題を出してぼくをへこませようとしたんだ。あれから五〇年たった今でも、はっきりと思い出せる。 ネズミがネズミの人口に比例して死ぬとしたら、ネズミの人口はどれくらいかを求める問題だった。
ポール・ ホフマン「放浪の天才数学者エルデシュ」  p.164)

ポール・エルデシュの友人であるロン・グラハムが数学に興味をもつきっかけとなったのがこの問題だ。ちょっと解いてみよう。

が、その前にもうちょっと単純な問題を考えよう。「ネズミがネズミの人口に比例して増える」としたら、 ある時間後にネズミは何匹になるだろうか。(「微分方程式」の意味が分かる人は以下飛ばして次へ行ったほうがいい気がします。 行くべきです。下は飛ばしてー見ないでー。)

まず、ネズミの増殖速度と個体数の比例関係を数式で表そう。

081116eq1

ここでxは個体数、時間はt。個体数の変化を時間で微分したものが増殖速度、 そしてそれが適当な比例定数aによって個体数xと結び付けられている。これは微分を含む方程式なので微分方程式と呼ぶ。 これは特に変数分離形と呼ばれるものの最も簡単な例になっていて、適当な作業によって、xについての式に簡単に書きなおせる。

まずは変数を分離する。変数はxとtだ。これを左右に分別する作業を変数分離という。

081116eq2

dxやらdtやらも気にせず移動してしまう。

そして両辺を(不定)積分する。変数を整理しているので、左辺はxについての積分、右辺はtについての積分を考えることになる。

081116eq2_1

積分という作業がどういうものかを分かっていないとこのインテグラルの唐突感が気持ち悪い(僕がそうだった)が、 まあとにかく両辺にうにょっとインテグラルを書いてしまっておk。で、普通に積分記号からdx、dtまでの間にある式を不定積分する。

081116eq3

ここでCは積分定数で、右の積分で付くやつも左の積分で付くやつもまとめている。もうちょい整理する。

081116eq4

右辺ちょっとおかしいじゃないかと思うかもしれないが(僕がそうだった)、「積分定数」というのが 「面倒なものをまとめただけの入れ物」だと知っていれば納得できる。定数に定数掛けても定数なので、 まあ要するにaCを改めてCと書き直したということ。

左辺にln(自然対数。logと書く人もいるけど、lnと書いたほうが自然対数であることがはっきりする。)が付いている。 lnの意味を考えれば分かることだが、こいつは右辺をeの指数部にしてやると外れる。

081116eq5

また右辺がちょっとおかしいじゃないかと思うかもしれないが(僕が(ry )、ここでのCというのはe^Cを書き直したものだ。 e^C*e^at=e^(at+C)というわけだ。定数の定数乗はやっぱり定数なのでこんな書き換えができる。

これで微分方程式は解けた。のだが、積分定数Cが残っているのはちょっと気持ちが悪い。よくこれは「初期値によって決まる」 と説明される。

たとえば、t=0のときにx=x0などとして代入する。これは容易に

081116eq6

だと分かる。これを代入すれば

081116eq7

となる。

これで問題は終了、解決した。初期のネズミ個体数と、経過時間、それに定数a(これは最初の式を見れば分かるが、 ある個体数のときの増殖スピードをそのときの個体数で割ったものだ)さえ分かれば、一定時間経過後のネズミ個体数が計算できることになった。

ちょっと長引いたので一旦切って次の記事へ引き続き。 以下は余談みたいなもの。

で、この説明は、

  1. 微分記号はバラしていい
  2. バラした記号を使って積分していい
  3. 積分定数に定数のみを含むどんな演算をしても積分定数として1文字で表現できる

ということが分かっていればすんなり(1/xの積分とかは突っ込むと多少難しいが)理解できる。しかし、 これらは明示的に教えてもらわないと結構分かりにくいポイントではないかと思う。 対数あたりから数学は独学なのでこのあたりでかなりつまづいた覚えがある。まあ僕が鈍いだけかもしれないけど。

それで、この問題の答えが次の一般的な事実につながる。

  1. 「指数関数」と単に言った時にeを底とする関数を指すことが多い
  2. 「複利的な増加」「指数関数的増加」を表現するとき、「初期値×指数関数」の形のモデルを用いる

一度でもこの問題を解いたことがあれば本当になんでもないことなんだけど、無いと特に後者が気持ち悪い。 何せ突然eを含む指数関数が出てくるんだから。

それでまー言いたいことは何かというと、自然科学を扱う学課を持つ大学では解析学を必須にすべきだし、 微分方程式について簡単な例から教えるべきだということ。 いま高校では微分方程式を教えていないということを知っている大学教員がどれだけいるのだろうか。 現状の問題がどこにあるのかきちんと把握できているんだろうか、改善に向けた努力はしているんだろうか。

…愚痴を言っていても気分は晴れないので次へ。

posted by Rion778 at 00:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 勉強ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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