なんだか前にも書いた気がして仕方がない。でも大切なことなので何度でも。
ここでは、カンデラ、ルーメン、ルクスという基本的な3つの単位について順に見ていく。
まず、カンデラ(cd)という単位だが
「特定の周波数(540 THz)の光が特定の強さ(1/683 W/sr)である方向を照らしているとき、 その方向における光度を1カンデラという」
といった感じで定義されている。しかしながら、この文章では「特定の周波数の光」と「特定の強さ」 がイメージできる人間でなければ1カンデラがどういったものなのかはさっぱり分からないだろう。これはあくまで定義であって、 説明用のテキストではないのだからそれは仕方がない。
なので、他人に説明するときはもっとイメージしやすい形で伝えなければならない。これは別に難しいことではない。
「ろうそく1本の明るさが、だいたい1カンデラ」
こう言えばイメージしやすいだろう。そもそも「カンデラ」というのはキャンドルと同じ語源のラテン語で、 昔は日本でもカンデラの変わりに「燭」という単位が使われていたし、実際にろうそくの明るさを基準としていた (厳密にはカンデラと燭は違うが、ほぼ1:1で変換できるようカンデラという単位は定められている)。
ここからルーメン(lm)の説明へ移ろう。
「1カンデラの強さの光を全方向へ放射するろうそくが、1メートル離れた場所にある壁を照らしているとき、 その壁1平方メートルを照らす光の量(光束)がだいたい1ルーメン」
カンデラは「強さ」を、ルーメンは「量」を指定するものと考えると分かりやすいと思う。
ところで、「ろうそく」を点と考えると、「1メートル離れた場所にある壁」はろうそくを取り囲む球の形となることが想像できるだろう。 この球の面積を決めてやると、ろうそくを中心とした「角度(立体角)」が指定できる。
これは、半径1の円(単位円)の弧の長さを指定することで角度が指定できる(弧度法、ラジアンによる角度の指定)ことと同じ。2次元 (円)では線(弧)だったから、3次元(球)では面(面積)を指定してやるのである。半径1の円の弧1に対応する角度を1ラジアンと呼んだ。 同様に、半径1の球の面積1に対応する立体角を1ステラジアンと呼ぶ。
ステラジアンを用いると、ルーメンは
「全方向へ1カンデラの光度を持つ光源が、1ステラジアンの範囲に放射する光束」
と言い換えることもできる。
このルーメンとカンデラの違いが分かりにくい。「1ステラジアンの範囲に」なんて言っているものだから 「1ステラジアンあたりのカンデラ」とか勘違いしてしまいそうだが、違う。ルーメンは光束(光の粒子の量)を指定するものなので、 興味がある範囲すべてが対象となる。ルーメンはあくまで「量」を指定するのである。
実際、全方向へ1カンデラの光度を持つ光源から1ステラジアンの範囲に放射される光束は1ルーメンで合っているが、 この光源が放射するすべての光束を考える場合、それは4πルーメンとなる。なぜなら、「全方向」とは4πステラジアンの範囲であるからだ。
すなわち、カンデラにステラジアンを掛けたものが、そのステラジアンの範囲におけるルーメンである。
つぎにルクス(lx)の説明へ移ろう。
ルーメンは「量」を指定するものであると言った。
しかし、同じ量の光を用いても、照らす範囲が広い場合と狭い場合とでは「明るさ」には差があるだろう。
なので、「明るさ」を数値化するには1ルーメンの光がいったいどれだけの範囲を照らすのかを指定する必要がある。ここでの「範囲」 はもはやステラジアンではなく、実際の面積(たとえば机の面積など)である。
そこで、ルクスは次のように定義する。
「1ルーメンの光束が1平方メートルの範囲を照らしているとき、その照度を1ルクスという」
1平方メートル当たり何ルーメンの光束なのか?これがルクス。
カンデラが「強さ」、ルーメンが「量」ならば、ルクスは「密度」を指定するものと言える(ただし、 ステラジアンあたりの密度ではなく、興味がある面積あたりの密度である)。
ろうそくと壁の例を持ち出せば、ろうそくから1メートル離れた場所にある壁はどこも1ルクスの照度であることになる。ここで「壁」 をろうそくから遠ざけると、同じステラジアンで照らすことのできる壁の面積が広がる。なので、 壁は1ルクスより小さい照度で照らされることになる。一方、「壁」をろうそくに近づけると、 同じステラジアンで照らすことのできる壁の面積が狭まる。なので、壁は1ルクスより大きい照度で照らされることになる。
まあこんな感じ。
ただ注意しないといけないのはカンデラ、ルーメン、ルクスのいずれも「ろうそくの明るさ」 という人間の感覚的な基準から出発しているものだということ。 人間の視覚は色によって感じ取りやすさが違う(緑が一番明るく見えやすい)ので、光のエネルギー量だとか、 光量子の個数だとかをこれらの単位で示すことはできない(光源の種類が分かればおおよその計算はできる)。つまり、 これらの値を基準として発熱量だとか光合成量だとかを計算してもちょっと説得力に欠けますよということ。逆に、 人間用の照明を設計するような場合はエネルギー量なんかよりも「どう見えるか」が重要なので、ルクスなどといった値を用いなければならない。
光の単位の話は以上です。以下余談。
「カンデラとは何だ?」との質問に、周波数だとか放射強度だとかで解説するのはどうかなーと以前から思っている。確かに「燭」 はSI単位系ではないが、感覚的な理解なしの定義の理解は難しい。というかありえない。 たとえばわれわれがよく慣れているメートルやグラムといった単位ですら、それを意識するときは何か基準となるものを同時に考えるだろう (自分の体、1円玉...etc)。SI単位系というものは確かに重要で、論文などはもちろんこれを使って書かないといけない。しかし、 重要だからといって定義を覚える必要はない。覚えるべきは「その単位と比較できる現実の何か」。感覚的な理解ができて初めて道具は使える。 細かい定義が必要となったら、理科年表でも調べればそれは見つかるはずだ。



例がわかりやすくて最高です。ありがとうございます